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バイク用品店に行くと、オイルに後から注入する形のさまざまな「オイル添加剤」が売られています。 第3章で説明したように、エンジンオイルには清浄作用や高温、低温時でも粘度を維持するものなど、多くの添加剤があらかじめ含まれています。 後から注入するタイプの添加剤も、実は目的は同じで、オイルの劣化や金属同士の摩擦を抑えたり、金属表面の傷を修復するなど、オイルの性能をさらに高めて、痛んだエンジンの調子を元に戻したり、新車時のコンディションを保つことを目的としているのです。 本当に効果があるんだろうか、と疑っている人もいるかもしれません。 その答えは……製品によってまちまちで、もちろん効果のあるものもあるし、高価だが思ったよりも効果のないものや、使い続けると逆にエンジンを傷めてしまうものなど、実に多くのものが混在している、という状況にあります。 成分や効果を理解した上で、正しい使い方をすれば、パワーがよみがえったり、エンジンの寿命を延ばしてくれるものも存在します。 しかし逆に、よくわからないまま妄信的に使うと、エンジンを傷める可能性や環境に良くない影響をおよぼすものもあるのが事実です。 たとえばオイルの粘度を下げる成分を添加すれば、オイルはサラサラになって抵抗は減りますから「始動性や燃費がよくなった」「エンジンがよく回るようになった」とユーザーに体感させることができます。 ところがそのマシンの指定粘度よりも粘度を下げ過ぎると、うまく潤滑ができなくなって、油膜切れのリスクが高まるのです。 また、海外製品の中には日本で使用が禁止されている成分や、燃焼すると環境に悪影響のあるダイオキシンや環境ホルモンなどの有害物質を排出するもの、長期使用するとオイルラインを詰まらせるリスクがあるもの、などもあるのです。 以下に、オイル添加剤の代表的な3タイプについて説明しますので、使用する際にはその特徴や注意点をよく理解したうえで導入することをお勧めします。 |
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1. 金属表面改質剤(メタルトリートメント) 塩素やフッ素、臭素などのハロゲン系や、りん系、硫黄系などの金属に反応する成分が使われます。 荒れた金属面に作用してミクロレベルで細かく溶かし、表面の凸凹を滑らかにします。 これによってピストンリングとシリンダーの密閉性が回復しオイル上がりを防止したり焼きつきを極限まで防止できます。市販のオイル添加剤の中では、もっともダイレクトに効き、効果を体感できるものです。 しかし原理は金属の表面を腐食摩耗させていることで、金属以外のシール類を劣化させる攻撃性があり、塩素ガスや硫酸ガスを発生させます。 長時間の継続使用ではパーツのクリアランスを増大させて圧縮が下がったり、触媒を破損させるおそれやマフラーのさびを誘発するおそれなどのデメリットもあるので、注意が必要です。 |
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2. 超微粒子個体潤滑オイル添加剤 フッ素(PTFE)やボロン、二硫化モリブデンのような超微粒子の個体を成分としています。 液体潤滑であるオイルに対して、ベアリング効果を生む個体潤滑材をブレンドしたもので、フリクション(摩擦)を下げるにはかなりの効果を発揮します。使用するとアクセルレスポンスが格段に向上し、滑るような体感を味わえるでしょう。 しかし所詮は固体である物質のため被膜とならず、エンジンを停めるとオイルパンに落ちていきます。 PTFEの粒子はオイルフィルターを通過する小ささなので使用後しばらくは 問題ありません。しかし走るにつれてオイルから出たスラッジがPTFE粒子と結合し、フィルターを通れなくなって目詰まりをおこします。同時に重くなって沈殿速度も増し、オイルパンに粒子が溜まってヘドロ状に堆積し、最悪の場合はオイルの循環を止めることもあります。 超微粒子の添加剤は湿式クラッチに粒子が挟まるとクラッチ滑りをおこすため、バイクには勧められない添加剤といえます。 |
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3. コーティング系オイル添加剤 現在市販されているオイル添加剤の中では一番安全なタイプといわれています。 成分は有機モリブデンや有機チタンなどが代表的です。 有機モリブデンはFM剤(フリクションモディファイヤー:摩擦調整剤・軽減剤)として、市販のエンジンオイルの中にも添加されている成分で、少量で非常に高い摩擦軽減効果を持ちながら、固体である二硫化モリブデンと違って油溶性のため、沈殿などの心配がありません。 しかしクラッチが滑る可能性があることで、JASO規格からは認可されていないようです。そこで、有機モリブデンに代わって、有機チタンを使った添加剤が注目されています。 こちらはクラッチを滑らせるリスクがなく、耐熱効果や強度も有機モリブデンより高いといわれ、今後のFM剤の主流になる可能性もある、といわれています。 |
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![]() 【第1章】エンジンオイルの役割ってなに? 【第2章】オイルの粘度ってなに? 【第3章】オイルの成分って何が入ってるの? 【第4章】オイルにはどんな種類があるの? 【第5章】オイルの品質はどうすれば分かるの? 【第6章】オイルはなぜ劣化し、そのまま走るとどうなる? 【第7章】きちんとしたオイル管理のすすめ 【第8章】オイルフィルターの役割とは? 【第9章】オイル添加剤ってどうなの? 【第10章】オイル交換でここまで変わる?その効果を実感 |