よく分かるエンジンオイルの基礎知識



走行距離が増えることはもちろん、時間の経過によってもオイルが劣化していく、ということはほとんどの人が聞いたことがあると思います。

ただオイルの劣化は見た目ではとても判断が難しく、それぞれの走り方や使用状況によっても変わってくるため、交換時期は「距離」と「使用期間」で判断されることが多いでしょう。
では、オイルが劣化する原因は何なのでしょうか。



オイルを劣化させる原因はいろいろ

オイルは熱にさらされることで酸化反応が進んだり、中に含まれる添加剤の性能が低下するなどの悪影響を受けます。元のキレイな状態に比べてオイルの酸化が進むと粘度が下がってサラサラになってしまい、油膜切れが起きやすくなるのです。添加剤が消耗してしまうと、密閉、冷却、防錆といった作用が低下し、エンジンのダメージが大きくなります。

オイルの酸化が進む原因は熱だけではありません。空気に触れるだけでも、水分や金属粉などを取り込むことでも進行してしまうのです。

また、ミッション内のギアが激しくこすれ合う場所の緩衝作用では、強い力がかかることでオイルの成分がだんだんに破壊されてしまいます。粘度を保つためにポリマーなど糸状物質の成分が含まれていますが、強い圧によって糸が断たれてしまい(これをせん断といいます)、粘度を保てなくなってしまうのです。オイル劣化の要因をまとめると、以下のようになります。

1~3は化学的な反応による劣化で、4~5は物理的な要因による劣化ということができます。

1. 燃料の燃焼でエンジン内が高温になることによる劣化

2. 気温の寒暖差などによりエンジン内に結露が発生し、オイルに水分が混ざることによる劣化

3. 走行距離の多種にかかわらず、オイルが空気にさらされ酸化が進むことによる劣化

4. ミッションのギアなどにより、金属同士の衝撃や圧力を受けることによるせん断性能の低下

5. エンジン内部品の磨耗によって生じた金属粉や燃料の燃え残り成分を取り込みオイルが汚れること

 




では、どんな走行状況でオイルは劣化しやすくなるのか、考えてみましょう。
オイルにとって劣化を早める大敵は、極端な油温の上昇です。

たとえば大都市でひどい渋滞の中をノロノロ運転しているようなときは、エンジンに走行風が当たらないため、油温がどんどん上昇します。オーバーヒートしてしまうとオイルの粘度は下がり、サラサラになりすぎてダメになってしまいますが、通勤で毎日渋滞に巻き込まれるような走りでは、オーバーヒートに近い現象が起こりがちです。

そして実は、オイルの温度は低すぎてもエンジンに良くないのです。たとえば家から駅までほんのわずかな距離を毎日走るような場合、暖気が終わらないような低速走行を繰り返していると、空気中の水分が蒸発しないでオイルに取り込まれ、エンジンにダメージを与えてしまいます。

また、低いギアで高回転を維持するような走りもオイルには良くありません。常に大きな力がオイルにかかるため、せん断性が低下してしまうのです。
 




オイルは使い続けるとだんだん汚れてきます。

これは、燃焼によりエンジン各部で発生したスラッジやガム質、金属粉などを取り込んで、洗浄しながら循環しているためです。

このように劣化したオイルを使い続けると、エンジン各部のパーツの摩耗を進める恐れもあります。また、水分を含んだオイルが循環すると、エンジン内部に腐食や錆を呼び起こす場合もあるのです。オイル本来の性能を維持するためとエンジンに無用なダメージを与えることを防ぐ……適切なタイミングでのオイル交換には、こんな理由があるのです。

よくエンジンオイルは3000Kmごと、そんなに距離を走っていないバイクでも、半年ごとにオイル交換をした方がいい、といわれます。あくまで目安ですが、この距離を超えるとオイルの汚れはどんどんひどくなり、オイル本来の性能が低下していくといわれているのです。

また、空気に触れるだけでもオイルは劣化しますが、真夏や真冬など、過酷な条件の季節を経たオイルは、それだけも劣化するのです。

ですから、たとえ距離は走っていなくても、夏や冬の終わりにオイル交換をしたほうが、愛車には優しいといえるのです。
オイル交換画像1 オイル交換画像2


【第7章】きちんとしたオイル管理のすすめ


目次

【第1章】エンジンオイルの役割ってなに?
【第2章】オイルの粘度ってなに?
【第3章】オイルの成分って何が入ってるの?
【第4章】オイルにはどんな種類があるの?
【第5章】オイルの品質はどうすれば分かるの?
【第6章】オイルはなぜ劣化し、そのまま走るとどうなる?
【第7章】きちんとしたオイル管理のすすめ
【第8章】オイルフィルターの役割とは?
【第9章】オイル添加剤ってどうなの?
【第10章】オイル交換でここまで変わる?その効果を実感