よく分かるエンジンオイルの基礎知識


オイルの粘度ってなに?


オイルには適度な粘り気が必要

オイルを買う際、缶のパッケージに「5W-50」や「10W-40」などの数字が書いてあるのを見たことがある、という人は多いでしょう。

これは、オイルの粘度を表す表示で、粘度というのはオイルにどれだけの粘り気があるか、を意味するものです。もう少し詳しく言えば、「オイルがある気温でどれぐらい粘り気があるのか」、を示しているのです。

この“10W-40”などの表記は、SAE(米国自動車技術者協会)が定めた粘度の分類で、0Wから60までの11段階に分かれており、番号が大きいほど粘度が高い、つまり硬いことを意味します。

では、オイルになぜ粘り気が必要なのでしょう? それは、金属の表面に貼りついて、油の膜を張るためなのです。金属の表面に膜を張って摩擦を少なくする、いわゆる潤滑作用のためには、ある程度粘り気がないといけません。

たとえば金属の板に水をかけるとすぐに流れ落ちてしまいますが、水あめやハチミツのような、ドロリとした粘り気のある液体なら、板に張りついてゆっくりと流れ落ちるはずです。

オイルの場合もこれと同様で、粘り気がないと金属の表面で油の膜を張ることができないのです。粘り気は、強ければいいというものではありません。粘り気が強すぎるとオイルの通り道をスムーズに流れることができず、エンジン内の冷却作用や洗浄作用などが、うまくできなくなってしまうのです。

オイルがきちんと本来の働きをするためには、粘度は硬すぎず、柔らかすぎず、適正な粘りが求められます。

当然ながら、どんな温度でもオイルの適正な粘りを保てるのが理想です。ところが、エンジン内部の温度変化は極端です。

冷えた状態からのスタートでは、外気温とほぼ同程度の温度ですが、走り出してエンジンが温まってくると、油温も100℃近くになります。さらに暑い時期の渋滞時などはエンジンやオイルクーラーに走行風が当たりにくく、時には油温が100℃を超えることすらあるのです。

そんな激しい温度変化の中でもきちんと多くの役割を果たすために、オイルにはさまざまな添加剤が配合されているのです。

オイル画像2_1


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オイルには適度な粘り気が必要

この粘度表記の意味を簡単に説明しましょう。
よく見かけるのが“10W-40”などの数字が2つ並んだものか、あるいは単に“50”などと書かれたものですね。

先の数字が2つのものはマルチグレードオイル、数字が1つのものはシングルグレードオイル、あるいはモノグレードオイルとも呼ばれます。

マルチグレードオイルの左側のWのついた数字は低温粘度、右側の数字は高温粘度を表します(WとはWinterの略です)。これをごく簡単に言うと、そのオイルが「気温○℃~○℃の間で使用できます」ということを表しているのです。

オイルの粘度は温度によって変わりますから、オイルの粘り気を比較する際には、同じ温度での粘度を比べる必要があります。基準となる温度は国際的な取り決めで、40℃および100℃となっています。

オイルは気温が低くなるとだんだん粘度が高まる、つまり粘り気が強くなって、最後は固まってしまいます。

逆に高温になると粘度が下がってサラサラになってしまい、油の膜を維持できなくなるのです。Wのついた低温粘度の数字は、小さければ小さいほど、寒い温度でも使えることを意味し、右の高温粘度の数字が大きければ、気温が高くても粘度を保てるのです。

参考までに、20Wのオイルは外気温が約-10℃、10Wは約-20℃、5Wは-25℃でもエンジン始動ができる、とされています。

マルチグレードが使用できる気温


 



シングルグレードのオイルにある“50”などの数字は、高温粘度だけを表しています。

シングルグレードは使用できる気温の幅が狭く、気温の低い季節や地域で使うと粘り気が強すぎて(硬すぎて)、オイルがエンジンの中をうまく循環できないのです。そのため現在では、シングルグレード指定の旧車やドラッグレース、気温変化のほとんどない地域など、ごく限られた条件下で使われるに過ぎません。

現在では、ほぼ1年中使用できる、マルチグレードのオイルが主流となっています。

シングルグレードが使用できる気温


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ほとんどのマシンには、バイクメーカーが指定するオイル粘度が定められています。これはとても重要で、この数値を大きく外れたオイルを使用すると、故障やトラブルの原因になることがあります。

オイルの粘度が硬すぎると、エンジン内各部の動きの抵抗となって、吹け上がりや燃費に影響が出ます。かといって粘度が低い、柔らかいオイルを使えばいいかというと、そうでもないのです。

最近ではエコカーを中心に“0W-20”など、きわめてサラサラの粘度の低いオイルを指定しているクルマもありますが、これはメーカーが当初からその粘度のオイルを使う前提でエンジンを設計しているから可能なことで、一般的なバイクのエンジンには適しません。

マルチグレードの場合はメーカー指定の粘度を基準に、季節に応じて右側の数値を±10程度の範囲で変えてみる、ぐらいにしておくのが無難でしょう。


【第3章】オイルの成分って何が入ってるの?


目次

【第1章】エンジンオイルの役割ってなに?
【第2章】オイルの粘度ってなに?
【第3章】オイルの成分って何が入ってるの?
【第4章】オイルにはどんな種類があるの?
【第5章】オイルの品質はどうすれば分かるの?
【第6章】オイルはなぜ劣化し、そのまま走るとどうなる?
【第7章】きちんとしたオイル管理のすすめ
【第8章】オイルフィルターの役割とは?
【第9章】オイル添加剤ってどうなの?
【第10章】オイル交換でここまで変わる?その効果を実感