よく分かるエンジンオイルの基礎知識


第1章 エンジンオイルの役割ってなに?

オイルは別名、潤滑油と言われます。

つまり、物体と物体の間を潤滑し、摩擦を減らす、これが最も大きな役目と言えるでしょう。

しかし、このほかにもエンジンオイルにはいろいろな役割があります。

多くの作用を持ち、エンジンの保護に役立っているだけに、オイルが劣化するとエンジン本体やミッションなど、さまざまな部品に対して悪影響が出るのです。

定期的なオイル交換の大切さを理解するためにも、まずはエンジンオイルの役割を知ることが大切です。



エンジンオイルの6つの役割

摩擦を減らす 1. 潤滑作用:摩擦を減らす!
エンジンは鉄、またはアルミなど、金属によってできています。

シリンダーもピストンも金属で、エンジンの内部ではそれらが高速でこすれ合いながら上下に動いているわけです。また、その上下動を回転運動に変換するクランクなども高速で動いています。

金属がそのまま直接こすれると、摩擦が大きく、動くことができません。

もし動いても、摩擦力によって大きな熱が発生したり、金属の表面が傷ついたりしてしまい、結果的にエンジンが焼き付くなど、重大なトラブルを発生させてしまいます。

金属同士の接触を油膜によって防止し、滑らかに動くよう潤滑するのが、エンジンオイルの最も基本的な役割です。


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2. 冷却作用:循環により摩擦熱を
移動し冷却する!

エンジン内部はガソリンの燃焼や、金属同士がすれあう摩擦熱などで、非常に高温になっています。

エンジンオイルには、その熱を奪い、エンジンを冷却する役割も担っています。エンジンの各部を循環して熱を吸収したオイルは、エンジン下部にあるオイルパンという容器に戻り冷やされます。

スーパースポーツ系など高回転、高性能なエンジンの場合は、内部のオイルがより高温になるため、オイルクーラーを取り付けてさらに冷却をうながす場合もあります。これにより、オイルが加熱によって分解される「熱ダレ」を起こさないようにするのです。
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オイル画像3 3. 密封作用:シリンダー内の密閉度を
高め、燃焼ガスの漏れを防止

エンジン内部でガソリンが燃焼する部屋となる「シリンダー」と、その燃焼圧を受け、クランクを回す「ピストン」。この二つの間にはわずかな隙間が設けてあり、それをピストンリングというパーツでふさぐことによって、燃焼したガスが逃げないような構造になっています。

しかしシリンダーとピストンリングの間にも、ごくわずかですが隙間があるのです。エンジンオイルはこの隙間に入りこみ、気密性を保持する役割も持っているのです。気密性が不十分だと、燃焼によって生み出されたエネルギーが隙間から逃げてしまい、パワーロスにつながります。エンジンオイルが燃焼室の密封性を高めることで、燃焼エネルギーを効率よくピストンに伝えられるのです。


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4. 洗浄・分散作用
エンジン内の汚れを洗い流す

エンジンの内部でガソリンを燃焼させると「スラッジ」と呼ばれる燃えカスが残ります。また、ガソリンにはネバネバした「ガム質」と呼ばれる物質が含まれていて、エンジン内部に付着します。

これらの汚れはシリンダーやシリンダーヘッドなど、エンジンの各部に溜まっていきます。この他にもススやカーボン、金属の摩耗した粉など、エンジン内には汚れが発生します。

エンジンオイルはエンジン内を循環することでそれらを特定の場所に溜まらないように吸着、分散させ、内部をきれいに保つ役割も担っています。エンジンオイルが黒く汚れていくのは、清浄作用が正しく行われていることの証拠なのです。
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オイル画像5 5. 防腐作用:金属の表面に膜を作り、
錆を防ぐ

金属が空気と水分に触れると錆が発生します。
エンジン内で燃料が燃えると水分を生じますし、エンジン内外の気温差による結露によっても、エンジン内に水分が発生することもあります。

これらの水分が、エンジン内に錆や腐食を生じさせる原因となるのです。また、燃焼ガスや未燃焼の混合気であるブローバイガス、エンジンオイルそのものの劣化などから発生する化合物もエンジン内を腐食させる原因となります。錆はエンジンの表面を傷つけて金属摩耗を引き起こすなど、エンジンの寿命を短くしてしまいます。

エンジンオイルは金属の表面に油膜を作ることで水分や空気をシャットアウトし、錆の発生を予防する役割もあるのです。


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6. 緩衝・応力分散作用:衝撃を吸収し、
力を分散

エンジンの内部では、金属のパーツ同士がこすれ合うだけでなく、高速でぶつかり合っています。

そのパーツ局部にかかる衝撃をクッションとなって受け止めて吸収し、分散させて金属の表面を保護するのもオイルの役目なのです。

エンジンオイルには大きな衝撃を受けても油膜が切れないような性能が求められます。
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【第2章】オイルの粘度ってなに?


目次

【第1章】エンジンオイルの役割ってなに?
【第2章】オイルの粘度ってなに?
【第3章】オイルの成分って何が入ってるの?
【第4章】オイルにはどんな種類があるの?
【第5章】オイルの品質はどうすれば分かるの?
【第6章】オイルはなぜ劣化し、そのまま走るとどうなる?
【第7章】きちんとしたオイル管理のすすめ
【第8章】オイルフィルターの役割とは?
【第9章】オイル添加剤ってどうなの?
【第10章】オイル交換でここまで変わる?その効果を実感